転職日記① 入社一か月目は放置プレーに耐える日々。転職は魔法ではない。

今年某日。新しい会社での一日がスタートした。

業種は変えたが職種は変わらないので、結局やるべき仕事や求められる能力、職場の雰囲気についてはだいたい前職と同じような感じであり、安堵のような、現実に引き戻されて気が滅入るような感情が入り混じる。

今回転職を決めたのは、前職が嫌だったからではない。社会に出てからの数年間、世の移り変わりの激しさや多様さ(産業も、労働のあり方や生き方も)をつくづく目の当たりにしてきた。転職をしようと思ったのは、そういう世の中ならば仕事や住む場所をある程度は自力でコントロールできるようになりたいと思ったことがきっかけで、その一環としてまずはまるっきり環境を変えて、縁もゆかりもない場所に身を置いてみようという、いわばその経験自体が一つの目的であった。

そういうわけで、私にとって転職は「自由への第一歩」みたいな意味合いを背負っていたはずなのだが、転職先で見る光景は拍子抜けしてしまうほどにこれまでと変わらない。白いオフィスとそこに集う大量の人、ドレスコードは前職より少しラフな感じだが中身はいたって真面目な会社員という点で同じ。転職前は、そこに行けば何かが変わるという漠然とした期待を持っていたが、実際そんなことはない。

入社一か月目の仕事は「そこにいること」とでも言えばいいのか、一言でいうと放置プレーを食らった。最初の職場でも同じ経験をしたことがあったのでその状況を極端に悲観するわけではないが、チームの中で自分だけが何の働きもしていないというのを感じ続ける状況は、これが一生続くわけでないとわかっていてもなかなかツライ。仕事で得る達成感や自分が役に立っているという感覚に、満足感を充たしてもらっていたのだと気が付く。とはいえ、メラメラした目つきで周りを見渡し猛スピードでキャッチアップしてやろうという気概が持ったのはほんの数日で、そこから先は過去数年間のゆるゆるゆるオーエル生活で培ったどっしり感だけは一丁前に、わけのわからないメールや会議を横目でやりすごしながらこの会社ならではの独特な言い回しがしっかり板についている先輩社員達をじっとりと眺める日々を送って一か月目が終わった。

一か月目も終盤に差し掛かったころ、暇を持て余すことに耐えかねて「仕事ちょうだいアピール」を始めた。自己主張大歓迎(という設定)の社風であること、中途入社であることなどからして主体性を求められているのは感じる。もともとこういう場面で自分を売り込むのは苦手だし、なんだかんだ言って大体の人は真面目におとなしく自分の仕事をこなしているだけだし、「自己主張」の塩梅はなかなか難しいが、レクチャーに小気味よく相槌を打つだけの時間、自分だけが発言しない会議、周りから気を使われているのがわかるランチタイム、それらのことがこれからいつまで続くかわからないということに耐えられなかった。

そんなわけで、悶々としながら時間が経つのを待ち続けた一か月目も終わり、ほっと一息をつく週末に。月末、前職の同僚と数か月ぶりの再会を果たした。キラキラと充実した姿を見せられたら格好よかっただろうが、バランスを取ろうともがく様子が今はまだ溢れでてしまう。まあ、そんなときもあるか。人間だもの。二か月目は気楽に、軽やかに。焦らずゆこう。